不動産投資1~3月、東京が世界首位 日本向けは四半期初2兆円超え
2025年06月19日
日本経済新聞やJLLのデータによると、2025年1〜3月期の日本向け不動産投資額は初めて四半期で2兆円超(約2.095兆円)となり、前年同期比23%増の過去最高を記録しました。これは2007年以降四半期ベースの記録を更新したもので、東京は世界の都市別投資額では首位(約110億ドル/約1.5兆円)に輝いています.<主なポイントまとめ>
日本全体の投資額:2.095兆円、前年比+23 %
世界の主な都市比較:東京 110億ドル(約1.5兆円)、
New York 73億ドル、Dallas–Fort Worth 63億ドル
海外投資の急増:634億円(前年同期比約3.7倍)、国内全体の32%を占める
主力業態別内訳:オフィス58 %、小売16 %、賃貸住宅9 %(物流・ホテルは6〜11 %)
地理的偏重:東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)に61%集中
<背景にある主な要因>
低金利+円安:日本の金利が1〜2%台と低水準で推移し、円安(160→144円/ドル前後)により海外勢の購入コストが割安に
海外投資の本格化:Blackstoneによる東京ガーデンテラス紀尾井町(約4000億円相当)、Gaw Capitalらによる東急プラザ銀座など、大型物件への出資が相次ぐ
投資魅力の多重要因:旅行者の増加に伴うホテル・リテール需要の回復、オフィス賃料の上昇、そして国内の生命保険会社等による不動産への資金シフトなど
<今後の見通しとリスク>
JLL予測では、通年で約6兆円の投資規模に達する可能性あり
過熱感の懸念:ホテルや大型商業施設などでは価格調整の兆しも。さらに大手が保有する不動産は、企業ガバナンス強化の一環として売却対象になりやすい
金利上昇リスク:日銀の金利政策変化は借入コストに影響を与え、新規投資への慎重姿勢を促す可能性あり 。
**主要な原因の整理**
2025年1〜3月期に東京が世界で最も不動産投資額を集めた都市となり、日本全体への投資も過去最高(2兆円超)となった背景には、複数の要因が重なっています。以下、主要な原因を整理して解説します。
1. 為替と金利:円安&低金利で割安に映る日本不動産
円安進行:2024年末~2025年初にかけて、円は一時160円台/ドルに。これにより、海外投資家にとって日本の不動産価格が実質的に割安に映った。
金利差の魅力:日本の金利は依然として1〜2%と非常に低く、借入によるレバレッジ投資がしやすい。
→ 同時期に米国や欧州は高金利政策を継続していたため、「安く借りられる日本」への投資が加速。
2. 東京の「相対的安全資産」としての地位
政治的安定:地政学的なリスクが高まる中、東京はアジアでも安定感のある都市と見なされている。
オフィス・ホテルなどの回復基調
東京のグレードAオフィスの空室率が低下傾向にあり、賃料も底打ちから回復中。
訪日外国人客の急増で、ホテルやリテールへの投資期待も回復。
→ 安定収益が見込める都市として注目度が上昇。
3. 大型取引の集中(物件売却の“出物”があった)
2025年Q1は、1,000億円を超えるような大型ディールが相次いだのも特徴
Blackstoneによる「東京ガーデンテラス紀尾井町」(約4,000億円)買収
Gaw Capitalによる「東急プラザ銀座」(約1,500億円)取得
→ これらの取引が投資総額を一気に押し上げた
4. 日本国内の売却意欲の高まり
企業の保有資産売却(資産の選択と集中)
上場企業や大手デベロッパーがガバナンス強化・ROE改善の一環として不動産売却を進めている。
例:西武HD、東急などが保有物件を外国勢に売却。
→ 海外投資家の「買いたい」意欲と国内売り手の「売りたい」タイミングが合致。
5. グローバルの中で「相対的に利回りが高い」
ロンドンやニューヨークなどに比べて、東京のオフィス・商業施設の利回り(キャップレート)は依然高め(3〜4%台)。
先進国都市の中では「まだ買える利回り」という評価。
6. 日本市場への本格参入が進む海外ファンド
モルガン・スタンレーやブラックストーンなどのグローバルファンドが日本用に特化したファンド組成を加速。
例:モルガン・スタンレーが日本不動産ファンドで約1,000億円超を調達中(報道)
→ 日本市場に対して「長期資金」が本格流入しているサイン。
株式会社ビルズ 代表取締役 井上 良介