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新しい商業空間「メタバース」の不動産としての将来性

2022年03月09日

「メタバース」の商業空間(不動産)としての将来性
2022年3月16日、ロンドンに本社がある世界最大級のメガバンク、HSBCとブロックチェーン・NFTを活用したプラットフォームの提供などを行うAnimoca Brandsの子会社、The Sandboxが連携するという発表があった。その目的の1つは、HSBCがThe Sandbox上の仮想土地区画を取得するためだという。他にもPwC(PricewaterhouseCoopers)香港が、The Sandbox上の仮想土地区画を取得したというニュースもある。メタバース上の土地の購入者は限定的だというがCoincheckとThe Sandboxも、Coincheckが保有するThe Sandbox上のLANDに、2035年の近未来都市「Oasis TOKYO」を制作するプロジェクトを開始している。
今年の流行語大賞でも取りそうな勢いでネットを中心に毎日のようにニュースになっている「メタバース」とは2000年代から「何回かリリースされては消えていったネット上の商業空間」の進化系である。
この手のサービスは人々の生活に定着すれば成功と言えるが、果たして今回こそは成功するのだろうか?オンライン上でアバターを用いて商業空間へ導く手法は既に「1997年にウルテマオンライン」が開発している。その後も一時期有名になり日本の企業も初めて商業空間内で不動産を購入するなどして話題になったのが「Second Life」だが、こちらもブームは去り既に廃れてしまった。(一応存続はしている)
その後は様々なゲームの世界で3CD技術やVR技術の発展により「独自のメタバース空間を創出するメーカー」が乱立している。若者を中心としたユーザー向けに、各社がリリースするサービスは主に「VRヘッドセット」を使って「メタバースにテレポート」し、「仮想世界の中でリアルなコミュニケーション」をする事により「没入型デジタル環境の仮想世界」「自らの生活や人生をネット空間内で過ごす」と言う新しい生活スタイルを目指している。しかしまだまだ課題や高いハードルも存在している。
現在一般的な仮想現実空間は「ファイナルファンタジー」「フォートナイト」「あつまれ動物の森」などの「各種オンラインゲーム」の中に創出された主にゲーム内の仮想空間だが、徐々に「バーチャルコンサート」などゲーム以外の楽しみ方をするユーザーの数は年々増加し、2020年に実施されたトラヴィス・スコットのバーチャルコンサートでは、「同時接続数1230万人」という小さな国家の総人口並みの人数が参加した。
既に「有名ブランドや様々なメーカーもメタバース参入」に名乗りを上げているが、残念ながらまだ一般の人々の生活になじんで普及する事は難しいと言うのが現状である。
そもそも「技術的問題として送受信データが膨大」になると予想されることや、そのような「機材や環境が整ったユーザーはまだまだ少数派」であり、現実問題として「長時間重いVRヘッドセットをつけて生活」することは不可能である。更に「常時ネットに繋がれた生活環境」「脳や肉体的に与えるダメージに対する研究も十分とは言えない。
今年は「仮想空間上の不動産関連事業」も手掛ける企業が数多く出てくる事は間違いない所だが、現状ではまだ話題作りの域を出ていない。今後商業地(街)として一般に普及するには、まずは「重いVRヘッドセットからの脱却」と言うハード面の解決が不可欠だと思われる。せめて身体にチップを埋め込み、目にも直接装着できるような「小さくて軽い常時装着可能な視聴覚デバイス」をSONYやアップル辺りが開発し、誰でも簡単に使いこなせる使い易いハードが普及しなければ今回も一過性のブームで終わる可能性が高い。そのような小型ハードウエアはかつては日本メーカーのお家芸であったが、今回ははたして?


株式会社ビルズ 代表取締役 井上 良介